―ラーメンスープ用チラーを、木質ペレットストーブの製造チームがつくる理由
新越ワークスは、業務用厨房用品の「Three Snow」、アウトドア用品の「UNIFLAME」、そして木質ペレットストーブなどを手がけるエネルギー事業「warmArts」という、性格の異なる3つの事業部を社内に併せ持っている。
一見、接点のなさそうなこれらの事業部だが、燕の地でものづくりを続けてきた工場と職人の技術という、共通の土台の上に立っている。
その”横のつながり”を象徴するのが、2026年に発表した回転式ラーメンスープチラー「QULIYA CHILLER M-002」だ。(QULIYA公式サイト:https://quliya.threesnow.jp/)
スリースノー事業部と東北大学多元物質科学研究所との共同開発により、企業が持つ食の現場の知見と、大学研究機関(アカデミア)の知見が社会実装されたこの製品は、炊きたてのスープを最短10分で20℃台まで冷却する厨房機器である。
従来のシンクに氷水を張る方式と比べて約2〜4倍の冷却速度を実現する、業界初の回転式チラーである。

注目したいのは、この”厨房機器”の製造を、ふだんは木質ペレットストーブを組み立てているエネルギー事業のチームが受け持っている点だ。
ラーメンスープ用チラーとペレットストーブ。用途もまるで異なる両製品だが、いずれもステンレス・鋼材の筐体加工、駆動部品・電装部品を持つ機構、精密な組み立て、熱を扱うという点で、必要とされる技術には確かな重なりがある。冷やす製品と温める製品を、同じ手が生み出しているのである。

なぜ、こうした柔軟な生産が可能なのか。
それは、新越ワークスが自社工場内に加工・製造のリソースを抱え、事業部の垣根を越えて技術を融通し合える体制を築いてきたからだ。ある事業部が「これまで扱ったことのない製品」の注文を受けても、社内の別の事業部が持つ技術と設備で生産を担う——そんな連携が、新越ワークスには備わっている。
この体制は、ODM(相手先ブランドによる設計・製造)事業においても大きな強みとなる。
厨房用品から燃焼器具、熱交換を伴う冷却製品まで、幅広い依頼に応えられるのは、単一の事業では持ち得ない多様な技術が社内に共存し、それらが有機的につながっているからにほかならない。
「その事業部で作ったことのない商品でも、社内で生産できる」。この一見あたりまえのようでいて実現の難しい体制こそが、新越ワークスのものづくりを支える見えない基盤である。
冷却と加熱、家庭と業務、既存と未知——境界を越えて技術が行き交うとき、新しい製品は生まれる。