issue 04

「エネルギーコストの高騰と不安定さ」

Mission

解決すべき課題

エネルギーの「あたりまえ」を、問い直す

電気代の請求書を見て、ため息をついた経験はないでしょうか。2022年以降、日本国内の電力料金は家庭・企業を問わず大幅に上昇し、2024年には政府の補助金が段階的に縮小されるなかで、多くの事業者がエネルギーコストの再試算を余儀なくされました。正直に言えば、私たちもその例外ではありません。製造業を営む新越ワークスにとって、工場設備の稼働に要する電力コストは、製品原価に直結する問題であり、他人事として論じられる余裕はないのです。

しかし、ここで立ち止まって考えたいのは、「電気代が高い」という事実だけではありません。もっと構造的な問いが潜んでいます。それは、私たちの生活や事業が、一種類のエネルギーに過度に依存しているという脆弱性の問題です。電力網はひとつの系統に統合されており、燃料価格の国際的な変動、地政学的リスク、自然災害、さらには再生可能エネルギーへの移行期の需給不安定といった要因が複合的に絡み合うことで、電気代は家計にも経営にも予測しがたい変数として居座り続けます。「安定している」と思い込んでいたエネルギーが、実は極めて不安定な前提の上に成立していたのだと、私たちは改めて認識しつつあります。

もちろん、電気というエネルギーの便利さや即応性は比べるものがありません。スイッチひとつで熱に、光に、動力に変換できる汎用性は、現代の生産活動の根幹をなしています。しかし、だからといって、電気一択の構造に無批判に依存し続けることが、企業にとっても家庭にとっても賢明な選択なのかは、検討の余地があると考えています。エネルギーをどう「分散」させるか、どう「地産地消」するか。その問いに向き合うことが、これからの時代に求められるエネルギーリテラシーだと、私たちは感じております。

新越ワークスは、1963年に新潟県燕市で創業して以来、製造業者として地域の産業と共に歩んできました。その歩みのなかで、2021年に子会社さいかい産業を吸収し、エネルギー事業部として再編したことで、warmArtsという新たなブランドの可能性と向き合うことになりました。「あたたかさ」を提供するとはどういうことか。それは単に室温を上げることではなく、エネルギーの選択肢を増やし、不安定な外部環境に依存しすぎない暮らしと経営の在り方を提案することだと、私たちは考えております。

Initiatives

具体的な取り組み

エネルギーの多様化

電気以外の選択肢を、真剣に考える

住宅や業務施設における熱エネルギーの多くは、電気やガスによって賄われています。一方で、ペレットストーブに代表される木質バイオマス燃料は、国内で調達可能な再生可能エネルギーとして注目されています。カーボンニュートラルの観点からも、化石燃料への依存を部分的に代替できる選択肢として、私たちはwarmArtsブランドを通じてこの可能性を探求しています。まだ普及段階にあるのは事実であり、導入コストや燃料調達の課題が残っていることも、率直に認識しています。それでも、選択肢が増えることの意味は、小さくないと考えております。

コスト構造の可視化

「感覚」から「数値」へ

エネルギーコストの問題は、多くの場合「高くなった気がする」という感覚的な認識にとどまりがちです。しかし、経営判断としてエネルギーを最適化するためには、使用量・単価・時間帯ごとの消費パターンを定量的に把握することが出発点になります。当社では社内DXの一環として、工場におけるエネルギー使用のモニタリングに着手しており、測定・解析・改善のPDCAを回す体制を整えつつあります。この取り組みはまだ途上であり、完成した姿を見せられる段階ではありませんが、数値で語れる状態をつくることが、問題解決の第一歩だと確信しています。

地域とのエネルギー連携

燕三条の産業基盤を、エネルギーにも活かす

燕三条地域は、金属加工を中心とした製造業の集積地として知られていますが、それはすなわち、多数の企業がそれぞれエネルギー課題を抱えているということでもあります。私たちは、個社で解決できる課題の限界を認識しつつ、地域のパートナー企業との情報共有や、共同でのエネルギーコスト最適化の可能性についても模索しています。まだ具体的な成果として報告できることは多くありませんが、地域産業全体としてのエネルギーレジリエンスを高めていくことが、長期的に見て重要な課題だと考えております。

暖房という問いを、ライフスタイルへ接続する

warmArtsが目指す「あたたかさ」の再定義

暖房器具は、エネルギーをもっとも身近に消費する製品のひとつです。電気ヒーターやエアコンは手軽である反面、電気代の影響を直接受けます。warmArtsが提供するペレットストーブは、単に「電気代の代替品」ではなく、暮らしのなかにあたたかさを取り戻す体験として設計されています。炎のある空間、木質由来の熱、地域の森林資源との繋がり。それは、エネルギーコストという経済的な問いに、ライフスタイルという文化的な答えをあわせて提示しようとする試みです。この試みがどこまで受け入れられるかは、まだわかりません。しかし、問いを立て続けることをやめない姿勢だけは、これからも持ち続けていきたいと思います。

Projects

プロジェクト